近年、中小企業が抱える様々な経営課題は深刻である。人材不足は採用難や社員の離職リスクを高め、組織全体の生産性低下を招く。認知度不足は市場での存在感を弱め、営業効率の低下は収益性に直接影響する。これらの課題に対処するためには、経営戦略上の重要施策として「広報」を位置づけることが不可欠である。
特に中小企業が広報を外注任せにしていては、「広報ノウハウ」が社内に蓄積されず、永続的にコストが発生するリスクがある。また、自社の商品・サービスについて熟知していない外部の人間に依頼しても、自社の強みや魅力が正しく伝わらないことも多い。
そこで注目されるのが、「広報の内製化・自走化」である。社内にPRノウハウを蓄積し、メディアとの関係を構築することで、自走できる体制を作ることができる。これにより、自社の強みや魅力を社会に正しく届け、社員の士気や組織力を高め、経営課題を根本から解決することが可能になる。本記事では「広報の内製化の事例」をもとに、なぜ広報を経営の中核に据えることが重要なのか、広報でどのような成果が得られるのかを紹介する。
広報は経営戦略の上位概念 ― なぜ中小企業に不可欠なのか
信頼とブランドを構築し、営業活動を強力に支援
広報の本質は、信頼の構築にある。広告が一方的な情報発信であるのに対し、広報はメディア掲載や第三者評価を通じて社会に伝わるため、客観性と信頼性を備えている。中小企業が営業活動を進める際、最初に壁となるのは「信用されていない」という顧客心理である。広報を戦略的に内製化すれば、企業の強みや社会的価値を発信することで、営業担当者は初回商談から信頼を得た状態で提案できる。
広報を内製化した事例では、製造業やIT企業が自社の技術力や専門性を継続的に発信した結果、営業効率が大幅に改善されたこと事例がある。具体的には、問い合わせ件数の増加や商談成約率の向上など、数値としても成果が確認できる。このように、広報活動は単なる周知手段にとどまらず、営業活動の戦略的補完として中小企業の競争力を底上げするものである。
採用・人材確保にも直結
採用市場において、中小企業は大手企業に比べてブランド力や待遇面で不利な立場に置かれることが多い。しかし、広報の内製化により、自社の理念や社会的貢献活動、社員の働き方の魅力を発信すれば、共感する人材を引き寄せることができる。特にZ世代やミレニアル世代は、「どのような価値を社会に提供している企業か」を重視する傾向が強く、広報による情報発信は採用戦略の強化につながる。内製化により発信内容の統一性が確保されることで、社員が自らの言葉で価値を語れるようになり、結果として定着率の高い人材の確保が可能となる。
危機管理の備えとしても機能
広報は平時だけでなく、危機管理の観点でも重要である。不祥事やクレーム、災害など突発的な事態に直面した際、日頃から広報内製化により社内で発信力を高めておくと、迅速かつ正確な情報発信が可能になる。信頼を事前に構築しておくことで、危機時の企業イメージへのダメージを最小限に抑えることができる。
外注任せでは即応力が低く、危機対応の効果も限定的になるため、中小企業にとって広報の内製化はリスクマネジメントの観点からも不可欠である。
外注広報の限界 ― 永遠にコストがかかる構造
ノウハウが社内に蓄積されず、永続的にコストがかかる
外注依存の最大の問題は、広報ノウハウが社内に蓄積されず、かつ固定費として永続的にコストがかかることである。記事作成やメディア対応、プレスリリースの戦略設計などの重要なプロセスはすべて外部に留まり、社内には成果物だけがもたらされる。これにより、次回以降の発信に応用できる知見が蓄積されず、広報力は定着しないうえ、毎月の外注費という固定コストは減ることなく経営資源を圧迫し続ける。
広報の内製化を行うことで、社内にノウハウを蓄積し、組織全体で活用可能な資産として定着させることができる。結果として、固定費を抑えながら長期的に安定した広報体制を構築できるだけでなく、戦略転換や新規事業への展開にも柔軟に対応できる。
成果が属人的になりやすく、再現性が低い
外注依存の最大の問題は、成果が属人的になりやすく、再現性が低いことである。外注先や担当者のスキルに依存するため、優秀な担当者が抜ければ広報の質は急速に低下する。また、外注先は「提供サービス」の立場で作業するため、経営戦略と完全に連動した発信が難しく、方向性や一貫性がブレやすい。その結果、安定した成果を継続的に得ることは困難であり、経営課題の解決にもつながりにくい。
広報を内製化すれば、社内にノウハウを蓄積し、誰でも一定水準の成果を出せる体制を構築できる。さらに、経営戦略と発信内容を直結させることで、再現性のある広報成果を安定的に生み出すことが可能になる。
外注費が経営資源の浪費につながる
外注依存の最大の問題は、固定費として外注費が継続的に発生し、成果が見えにくいため経営資源の浪費につながることである。特に中小企業では、限られた人員や予算を効率的に活用する必要があり、外注費が無駄に積み上がることは財務リスクを高める。成果が不透明なまま固定費がかかり続けるため、経営判断の柔軟性も損なわれる。
広報を内製化することで、固定費を抑えつつ社内ノウハウを蓄積でき、長期的に安定した広報体制を構築できる。さらに、社内資産としての広報力を活用すれば、戦略転換や新規事業への展開にも柔軟に対応でき、限られた経営資源を最大限に活かすことが可能になる。
広報を内製化・自走化するメリット
社員が自社の価値を言語化し、組織力が強化される
広報の内製化に取り組む際、経営者はまず自社の価値や強みを言語化する必要がある。それを社内外へ繰り返し発信し浸透させることが重要だ。このプロセスでインナーブランディングが進み、社内に知見として蓄積され、営業や顧客対応でも統一したメッセージを伝えられるようになる。広報の内製化した成功事例では、社員自身が自社の強みを理解し、発信できるようになった結果、組織力の向上が確認されている。
経営戦略と広報活動が直結することでスピード感が増す
広報の内製化により、経営戦略の変更や新規事業立ち上げの際に即座に発信内容を調整できる。外注ではタイムラグが生じるが、内製化すれば戦略と広報活動が直結し、迅速かつ正確に情報を届けられる。結果として、意思決定から市場対応までのスピードが向上し、機会損失を減らすことが可能になる。さらに、社内に蓄積された知識や経験を活用できるため、次回以降の広報活動にも即座に反映できる。
社員の発信力を高め、組織文化を醸成する
広報を内製化することで、社員一人ひとりが自社の価値や強みを正確に理解し、自ら発信できる能力が向上する。このプロセスにより、社内での情報共有や意思疎通が活性化し、組織文化の醸成につながる。また、社員が主体的に広報活動に関わることで、組織全体の自走力が高まり、経営戦略に沿った発信を継続的に行えるようになる。結果として、内製化は単なる広報体制の強化に留まらず、社員の成長と組織力の向上を同時に実現する手段となる。
中小企業の広報内製化・自走化事例
成功事例①:「受け身の受注型ビジネスから脱却した」金属加工業
広報の自走化に取り組む前は、主要取引先からの受注が半減し、受け身の受注型ビジネスでは存続が危ぶまれる状況だった。営業活動だけでは限界があり、新規顧客開拓の必要性に迫られていた。さらに、競争の激しい市場で自社の強みを伝える手段がなく、認知度不足から問い合わせも伸び悩んでいた。事業転換を図っても、その価値を広く伝えられなければ、安定した受注につながらないという課題を抱えていた。
成功事例②:「広報未経験から離職率ゼロを実現した」イベント会社
導入前、コロナ禍で売上が前年比8割減となり、イベント業界特有の厳しい状況も重なり、採用活動が停滞していた。以前は毎年5~6名の新卒採用が安定していたが、売り手市場と業績低迷により内定辞退が相次ぎ、会社の魅力を十分に伝えられず人材確保に課題を抱えていた。また、社内のコミュニケーション不足も目立ち、従業員のモチベーション維持が課題だった。
成功事例③:「業界で深刻化する採用課題を根本解決」した建設業
広報自走化前、建設業界における採用難と技術者の高齢化は深刻であった。特に土木分野では専門学校が限られ、新卒採用の絶対数が少なく、経験者採用も困難であったため、自社の魅力を十分に伝えられず、採用活動は停滞していた。社内人手不足や現場との連携不足もあり、採用施策を具体化できない状況であった。
広報内製化を始めるためのステップ
1. 経営者自身が「広報=経営戦略」と認識する
広報内製化を成功させるための第一歩は、経営者自身が広報を「経営戦略の中核」として捉えることである。経営戦略の意図を正確に反映した発信ができなければ、広報の成果は限定的になる。経営者が広報の重要性を理解し、組織全体にその認識を浸透させることで、社内の意思統一が進み、広報内製化の取り組みがスムーズに進む。
2. 社内で広報担当を明確化する
次に、社内で広報担当を明確にする必要がある。最低でも1名、兼務でも構わないので担当者を決め、各部署からの情報が吸い上げやすい環境を経営者自らが率先して整備することが大事である。経営陣と担当者が連携し、定期的に情報共有の場を設けたり、経営方針を広報担当に共有したりすることで、戦略に沿った発信が可能になる。担当者は情報整理や発信準備を担い、中心となる経営者が全体の方向性を指揮することで、広報内製化の成果を最大化できる。役割が曖昧なままでは発信の一貫性やスピードが損なわれるため、初期段階で担当者の明確化が不可欠である。
3. 自社の強みや魅力を具体化・言語化する
広報内製化を進める上で、自社の強みや魅力を具体的かつ言語化することは必須である。社員全員が自社の価値を理解し、統一したメッセージで発信できるようになることで、外部とのコミュニケーションの精度が向上する。具体化・言語化のプロセスは、インナーブランディングにもつながり、社員の自社理解を深める重要な手段となる。
4. 自走化に不可欠な、「PRノウハウ」「メディアリスト」を社内に蓄積する
広報の自走化には、社内に必要なリソースを蓄積することが不可欠である。①記事作成やプレスリリース作成などのPRノウハウを社内に蓄積させることで、外注依存から脱却できる。②自社のターゲットメディアを選定し、メディアリストを入手した上で、記者や編集者との関係を社内で構築・管理することが必須である。営業活動と同様に、アプローチ先リストがなければ広報活動は成立しない。こうして社内にノウハウとメディアネットワークを蓄積することで、広報の自走化が可能となり、経営戦略と連動した戦略的な発信を継続的に行える体制を整えることができる。
5. 社会の関心事に紐づけて自社の取り組みをメディアへ発信する
最後に、自社の取り組みを社会の関心事と紐づけて発信することが重要である。メディアは単なる企業宣伝を取り上げるわけではなく、社会的意義のある情報に注目するため、社会課題や市場トレンドと関連付けることで、自社の活動を取り上げてもらいやすくなる。広報内製化されたチームが社内で蓄積したノウハウを活用し、タイムリーかつ戦略的に発信することで、社会への影響力やブランド力の向上、認知度拡大につなげることが可能である。
まとめ
広報は、単なるメディア露出の手段ではなく、経営戦略の中核として位置づけるべきものであり、中小企業の経営課題を解決する不可欠な武器であることを理解いただけただろうか。
人材不足、認知度不足、営業効率の低下といった問題に対して、外注依存では広報ノウハウが社内に蓄積されず、永続的にコストが発生するだけで、経営課題の根本的な解決にはつながらない。
広報を内製化・自走化することで、社員は自社の価値を正確に理解し、戦略的に発信できるようになる。これにより組織力が強化され、営業効率や採用力の改善も実現可能である。
実際の「広報 内製化 事例」が示すように、中小企業であっても製造業やIT企業など、多くの成功例が存在する。外注に頼らず、自社で広報力を構築することこそ、持続的な成長と競争力を確立する最も効果的な方法である。
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